あれから(火傷してから) 十日たてども わたしの脚はまだ痛く
完全にナメてたよ、火傷。
もっとすんなり戻っていくと思っていた
甘かった
こんなに時間がかかるなんて。
朝起きたときが、激痛。
しばらく歩けない。ヒリヒリするとかじんじんするとか、そんな単純なもんじゃない。表面だけでなく、筋肉が疼く。足が伸ばせない。
無理して仕事にいくけど、辛い。半日ならなあ。疲労感もいつもの倍。座り仕事ならともかく、ムリして動いてると やばい。だめだ、もう動けない。ってなる。
毎日写真を撮って火傷観察日記でもつけようかと思ったけれど、速攻やめた。
グロいし、痛いし、治ったらたぶんもう見たくもない。
大きな水ぶくれが出来、薄皮がやぶれ、赤く痛々しい そして皮が張ってきたのにまた捲れて肉が剥き出し、ハラミのよう そこにぽつぽつと皮膚ができてくる
患部は毎日ころころ変化する まるで生きもののよう。片脚に特殊生物を飼っているようなきぶん。そらそうか、わたし、生きものだ。
わたしの一部が、赤くえぐれて、えらいことになってる。
昨日より今日より明日。
たぶんよくなってる。たぶん。
でも、昨日より今日のほうが痛い場合もある。
毎日の処置も数日で慣れて日々のルーティンに 項目がひとつ増えたみたい。
ガーゼに、薬を伸ばして塗って、患部にあてホワイトテープで止めてさらにネット。かぶれてすこし痒かったりするけど、歩くとネットがずり落ちてきて傷にこすれて痛いけれど、そんなことは言ってられない…
医師に もし自分の皮膚で戻らない場合は移植が必要、と手術を示唆されぞっとする。皮膚移植。植皮。他の部位から皮膚を持ってくる。きれいには治らないらしい。
そんなの、絶対嫌だ。昔から丈夫で病気に縁がないこともあり、大の病院嫌い。怪我の痛みは我慢できても、治療や処置の痛みからは逃げ出したくなる。滅多に病院なんて行かない。
それが手術なんて…!恐怖の崖っぷちに立たされる。
寒気がして神経が患部に集中し余計に疼く。よくドラマで見るような手術の光景が頭の中をぐるんぐるん。そんなのおそらく気絶するね。麻酔するったって、表面だからって、身体にメスが入るなんて。
自慢じゃないけど、わたしは注射すらこわいんだよ!
大人のくせに、全力で拒否したい。
だれか、大丈夫って言って。
でも、
火傷の跡見てないくせに、大丈夫なんて適当なこと言わないで。
そんなふうに当たり散らしたいかんじだ。
手術は、どうしても避けたい。
いちばんの理由は、怖いから!!
拒否反応を起こしたとき、一旦冷静になって嫌な理由を具体的に考えてみるのは、いいことかも。
1.仕事休まないといけない。
2.傷跡がキレイに治らないらしい。
3.術後ってすぐ回復するの?
4.入院したら、お金かかる。
5.なにより、痛そう。
6.かわいいパジャマがない。
...という詰まらんことまで。
手術っていったって、別に死ぬわけじゃないんだし〜
なんて、さらりとはいかない。
がんばれ、わたしの皮膚!
がんばれ、わたしの細胞!
再生して、広がるのよ!!
これほどまでに、自分の皮膚を応援したことはない。
で、すこしでも。すこしでも身体に、皮膚に良いことをしたい…
そうだ、肌に砂糖はよくない。
砂糖断ちだ!!
野菜摂取、万能な酵素玄米。
細胞を活性化させるサプリに、コラーゲン。
出来ることをやろう。
あまり動き過ぎず、ムリせず。
つーか、歩くのも辛い。右を引きずって歩くので、左にも負担がかかる。
むかし、骨折して松葉杖なのにムリして遊んでくれた友人がいたけど、痛かったよね、ごめんね。
あのときはありがとう。
久しぶりだったから、キャンセルしたくなかったんだよね。
やさしいなあ。あのときのやさしさは、いまとなっては不確かにするする逃げていく。
一瞬ではなく、持続する痛みに気は滅入る。
いつまで続くんだろう…ちゃんと、完治するの?
弱っていると、ポジティブに考えられなくなる。ほんと、病は気から、だとおもう。
新しいコートにブーツ、欲しいものはたくさんあるけど、他のなにより健康がいちばん。
風邪ひいただけでなにかとめんどうなのに、行動に制限ができるなんて。
働けないのは、さらに辛い。
長引くと、暮らしていけなくなる可能性だってある。
分かっているつもりでも、こんなときに思い知る
日々の有り難み。
なにか問題が起きたとしても、ふつうに払える程度のお金で解決するなら、ぜんぜんマシ。
元気になったら、危なっかしい作業台をもっと合う高さに変えて、広く使いやすい工夫をしよう。
ティータイムはかかせないけれど、
いまは、熱湯が恐怖。
車で事故ったときしばらくは運転が怖いように。電車で痴漢に遭ったらしばらくは通勤が怖いように。
そしてそのうち慣れて、忘れはしないけど、まあまあ普通になって。
でも、まえよりちょっと強くなる。対処できる。いまできることを考えられる。
ー
そして、2週間
つまり上の文章から数日
現在順調に回復中。
ゆる砂糖断ちも、6日目に突入。
事態は好転し皮膚が、生えてきた
生えるって表現はおかしいかもしれないけど、ほんとにそんなかんじ。
一旦皮がめくれて肉が剥き出しになり激痛、から無事に、どんどん再生中。
細胞が広がる。
ほんとに毎日変化しておもしろいな
まだまだ赤いし痛みも少々。火傷の跡がすっきり消えるまでは時間がかかると思う
しかし恐怖の妄想をひとしきりしたあとなのでとてもこころが軽い。
このまま、どんどん 戻れわたしの表面
ー
さらに、数日たったいま。
すこしの痛痒さはあるものの、すっかり生まれかわった気分。
患部はまだ赤くてひどいけど、ちゃんと皮膚が張りもう戻っていくのを待つだけ。あとは時間が必要。
安心できるって、すばらしい。
これからもね、この身体で生きていく。
だいじなだいじな身体だよ。